頭頸部癌術後の嚥下障害の病態を解明するために、ビデオ透視と嚥下圧測定を行った。対象は喉頭を保存した症例で、舌根部を含めた舌半切以上を行った口腔癌と、軟口蓋及び咽頭側壁を1/2以上切除した咽頭癌の症例である。方法はビデオ透視による口腔期及び咽頭期の評価と嚥下圧測定による評価を行った。嚥下圧の測定は、station pull-through法で行い、前鼻孔から挿入した圧測定プローベを頚部食道から軟口蓋部まで位置を動かしながらそれぞれの部位の嚥下圧を記録した。嚥下開始の判定には筋電計を用いて頤舌骨筋の筋放電で判定した。測定した記録は、食道入口部圧波形と嚥下圧曲線にて解析した。 ビデオ透視の結果では、95%に口腔期の障害があり、咽頭への送り込み障害のため、口腔内残留と分割嚥下が見られた。また、口腔保持の障害のため咽頭流入が59%に見られ、そのうちの16%に喉頭挙上期型誤嚥を認めた。咽頭期の障害では、74%にクリアランスの不良を認め、47%に喉頭侵入や誤嚥を認めた。誤嚥のタイプは下降期型誤嚥であった。 嚥下圧測定の結果、食道入口部圧は安静時の陽圧と嚥下時の平圧化が全例でみられ、輪状咽頭筋ま正常に機能していることがわかった。これに対し、舌亜全摘例、咽頭側壁摘出例、軟口蓋摘出例では軟口蓋部と下咽頭部の圧は全般的に低下しており、このために食道入口部を通過する圧が得られず、クリアランスの不良と下降期型誤嚥を生じているものと考えられた。 この病態を改善するためには、口腔の再建の際には、ボリュームのある皮弁を用いることにより、口腔保持と送り込みを改善させることが必要であり、咽頭の再建でもボリュームのある皮弁を用い咽頭腔を狭くする工夫が必要と考えられた。
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