インフルエンザ菌外膜タンパク(P6)より毒性を除去したrecombinant P6(rP6)を遺伝子組み換えにて作成した。また、粘膜アジュバントとして用いられるコレラトキシン(CT)のAlサブユニットのみを発現した変異型タンパクであるmutantCTA1(mCTA1)を作成し、rP6とmCTA1の融合タンパクであるmCTA1-P6を作成した。まずrP6及びmCTA1-P6の2つのタンパクが抗原として働くかどうか調べるために、BALB/cマウスを用いて全身投与を行い全身性免疫応答確立の有無を調べた。rP6はadjuvantとしてCTを併用して投与を行ったが、mCTA1-P6については単独投与を行った。その結果、rP6+CT群、mCTA1-P6群のいずれにおいても血清IgGの上昇を認め、脾臓の抗体産生細胞をELISPOT法にて解析した結果、IgG産生細胞の増加を認めた。このことからrP6、mCTA1-P6はどちらも全身投与にて自然型P6と同等の抗原性を持つことがわかった。次に経鼻免疫実験を行った。BALB/cマウスを用いてrP6+CT投与群、mCTA1-P6単独投与群を設定し、週1回投与で合計3回経鼻免疫を行った。その結果、どちらの群においても血清IgGの上昇および脾臓IgG産生細胞の上昇を認めた。さらに鼻腔洗浄液中のIgAの上昇を認め、鼻粘膜及び顎下腺の抗体産生細胞数を解析したところ、IgA産生細胞の増加を認めた。このことから、両者の組換え抗原は全身性免疫応答だけでなく粘膜免疫応答も確立できることがわかった。これらの免疫応答のメカニズムを検討するため、血清サンプルを用いてELISA法によるIgGサブクラス解析を行った。その結果、rP6とmCTA1-P6による免疫応答はTh2型優位な反応であることがわかった。自然型P6+CTの投与実験で血清IgGサブクラス解析を行うとTh2型優位な反応であったことから、これら組換え抗原による免疫応答は自然型のものと同等の作用機序であることが示唆された。
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