研究課題/領域番号 |
13671799
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
塩谷 彰浩 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (80215946)
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研究分担者 |
茂呂 和久 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30317226)
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キーワード | 運動神経麻痺 / 反回神経麻痺 / 運動神経細胞死 / GDNF / BDNF / 遺伝子治療 / adenovirus / 疑核 |
研究概要 |
13年度の期間においては、中枢側の神経線維や運動神経細胞へ遺伝子治療が可能か否か検討した。ラット迷走神経を頚静脈孔レベルで抜去して疑核運動神経細胞死誘発モデルを作成し、レポーター遺伝子を搭載したadenovirusベクターを頚静脈孔の迷走神経切断端から導入したところ、ベクターが逆行性に軸索輸送され、脳幹の疑核運動神経細胞において遺伝子を発現することが確認された。さらに、疑核における脱神経に伴う運動神経細胞死の抑制を目的に、同モデルを用い、運動神経細胞に対して強力な栄養作用を持つGDNF(glial cell line-derived neurotrophic factor)遺伝子導入を行ったところ、遺伝子導入後2週、4週の時点で、対照群に比べ有意に疑核運動細胞死が抑制され、神経障害時に誘導されるNOS(nitric oxide synthase)の発現も抑えられた。14年度はこの疑核運動神経細胞死が、BDNF遺伝子導入により抑制されるか、さらにBDNFとGDNFの同時遺伝子導入により抑制が増強されるか、同様のモデルを用いて検討した。その結果、BDNF遺伝子導入では、GDNF遺伝子導入とほぼ同様に、有意な運動神経細胞死抑制効果が得られた。BDNFとGDNFの同時遺伝子導入では、BDNF単独遺伝子導入やGDNF単独遺伝子導入群に比べても、さらに有意に運動神経細胞死が抑制されることが示された。 この結果は外傷や手術合併症等で運動神経を切断した場合、神経切断端からBDNF遺伝子ベクターを投与して逆行性に運動神経核に遺伝子導入し、神経損傷に伴う運動神経細胞死を防止し、神経再生を促進し得る可能性を示すものであり、さらにBDNFとGDNFの同時遺伝子導入によりその効果が増強されるものと考えられた。
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