研究概要 |
1.垂直半規管性OTR、SVV、vectionを検討した。 被検者を着座させ、頭を60度後屈、さらに左・右に各々45度回旋させた頭位でyaw planeでの等加速度回転刺激を負荷し、垂直半規管別の回転中OTRを検討した。また、その際に観察されるSVVならびにvectionを検討した。SVVは回転刺激前・中で評価し、vectionは回転刺激中に評価した。 結果は以下のごとくであった。垂直半規管が興奮した場合、右前ならびに後・垂直半規管からは時計回りのOTRおよび頭位傾斜が誘発され、左前ならびに後・垂直半規管からは反時計回りのOTRおよび頭位傾斜が誘発された。さらに,垂直半規管が興奮した場合、SVVの偏位が誘発されることが確認され、ことに後半規管が興奮した時に有意にSVVの偏位が認められた。SVVの偏位はOTRや頭位傾斜の方向と一致する傾向にあった。OTR、SVVが誘発された状況でvectionも誘発され、その方向はOTRやSVVと逆方向であった。同時に、身体もvection側に偏倚する傾向にあった。この現象はvisuospinal postural compensationに関係するものと考えられた。 2.空間識指標である「めまい感」の発現機序を半規管から中枢へいたる情報処理機構で検討した(近赤外線脳血流計:光トポグラフィーによる検討)。 温度刺激を用いて半規管を刺激し,その興奮時および抑制時に見られる大脳皮質の神経活動を脳血流量を指標とし光トポグラフィー(ヘモグロビン量を測定)を用いて検討した。結果は,半規管の興奮性反応により両側の大脳皮質(頭頂側頭部)のヘモグロビン量が増加し,抑制性反応でヘモグロビン量が減少した。空間識指標である「めまい感」は大脳皮質血流量差が大きい程,強かった。 以上より、半規管(ことに垂直半規管)が空間識や動作に関係することが示唆された。
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