1)一酸化窒素(iNOS)は免疫組織傷害の一因である。内リンパ嚢局所二次免疫反応動物の蝸牛でのiNOS発生を検索した。抗原刺激翌日には蝸牛の変性とともに、コルチ器、ラセン靭帯、血管条、ラセン神経節細胞にiNOSの発現を認め、内耳免疫傷害に関与することが示唆された。同免疫動物において、ss-DNAの発現を抗原刺激後翌日にラセン靭帯と血管条に認めたことから、免疫組織傷害による早期にアポトーシス変性が起動することを示唆した。2)分子生物学的解析には抗原の同定は必須である。自己免疫性迷路炎における内耳粗抗原の段階的精製をミニホールゲルエリュウター装置により、分子量別に14分画し、各分画蛋白の内耳自己抗原性を検討した。抗原をフロイント完全アジュバントに混合し、C57BL/6マウスに単回皮下感作した。感作後7日目の蝸牛前庭への浸潤炎症細胞数を計測し、自己抗原性の強さを連続切片90枚での浸潤細胞総数で判定した。結果:分子サイズ55〜66kDaの蛋白分画感作群は3622±2310と最も多い浸潤細胞数を記録し、分子サイズ38〜45kDa分画群の1263±600がこれに次いだ。対照群の58±29に比し有意な増加であった。考察:55〜66kDa、38〜45kDaの内耳蛋白群に明瞭な自己抗原性を認めた。これらの蛋白群にはCOCH遺伝子由来蛋白を含むことから、本研究は実験的自己免疫性迷路炎モデルの臓器特異性を示唆した。
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