研究概要 |
内リンパ嚢局所免疫動物では抗原刺激翌日から温度眼振反応抑制と自発眼振が発現する。このモデルで一酸化窒素による免疫組織傷害の関与を免疫組織学的に検討した。KLH抗原を全身皮下感作した動物の内リンパ嚢にKLH抗原で二次的刺激した翌日には、前庭神経節細胞、前庭感覚上皮細胞と支持細胞に明瞭な誘導型一酸化窒素の発現を認めた。この結果は一酸化窒素による前庭感覚細胞の免疫組織機能傷害の関与を示唆した。さらにこのモデルでの免疫組織傷害にアポトーシス機序の起動を示す証拠としてcaspase-activated deoxyribonuclease(CAD)とcaspase 3(CPP32)の発現を免疫組織学的に認めた。内耳自己免疫病の臓器特異的なな抗原の同定は同疾患の病態解明、治療法開発に重要である。Whole Gel Eluterを用いて一度に多量の内耳粗抗原を分子量別に30の分画を採取し、それぞれの分画抗原を5回皮下感作して抗体産生を誘導させ、抗原の内耳特異性を検討した。ウエスタンブロット法では、分子量58〜61kDa, 59〜63kDa分画の抗原蛋白のみ63kDaで発現する血清内耳抗体を産生し、この抗体は腎臓、肝臓、脳、肺組織には無反応であった。免疫組織化学的検索では、主たるIgG局在を血管条血管、ラセン靭帯血管、蝸牛軸血管に認めた。この結果は分子量59〜61kDaの内耳抗原に内耳特異的な蛋白抗原を含み、内耳血管系組織に多く存在することを示唆した。
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