研究概要 |
内耳免疫傷害の一要因となる一酸化窒素(iNOS)の発現を免疫組織化学的に観察した。内耳局所免疫反応24時間以内に蝸牛のコルチ器、ラセン靭帯、血管条、ラセン神経節細胞そして前庭の前庭神経節細胞、前庭感覚上皮細胞と支持細胞にiNosの発現を認めた。さらにアポトーシス発生機序としてss-DNA, Caspase-activated deoxyribonuclease(CAD)およびCaspase 3(CPP32)の発現をラセン靭帯・血管条に認めた。内耳自己抗体は内耳自己免疫病発症の重要な鍵を担う。牛内耳粗抗原をマウスに反復感作して誘導した抗体は牛内耳やマウス腎、肝、脳、肺の組織蛋白にも多数の陽性プロットを発現した。その結果、同疾患の解明には内耳特異的蛋白抗原によるモデル作成が必須となった。Mini whole gel eluterを用いた分子量別分画精製内耳蛋白の単回感作では分子量55〜66kDa分画に最も強い内耳への炎症細胞浸潤誘導を認めた。次いでWhole gel eluterによる大量同一分画精製内耳蛋白での反復感作では、分子量54〜62kDa蛋白分画に牛内耳蛋白60〜70kDaとの単一陽性ブロット発現とマウス他臓器蛋白には全く反応しない内耳特異的な抗体誘導を認めた。同分画感作動物は血管条血管にIgGおよび補体C3の局在を認めた。同分画蛋白が内耳自己免疫病の病的蛋白抗原であるかは、組織傷害および機能障害の検討が今後必要である。さらに同分画蛋白が内耳COCH遺伝子由来蛋白か否かはプロテオーム解析の検索が必要である。
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