研究概要 |
近年、鼻粘膜肥満細胞はTh2型のサイトカインを分泌し、B細胞よりのIgE産生を誘導し、アレルギー炎症の存続にも重要な役割を演じていることを報告した(J Clin Inv.1997,Clin Exp Aller 1998)。ヒト肥満細胞は顆粒中に含まれる蛋白分解酵素の種類により2つのサブセットに分類されている。すなわち、トリプターゼのみを含有するMC(T)とトリプターゼのほかにキマーゼやカテプシンG、などの酵素を含有するMC(TC)である。この2種類のヒト肥満細胞は、しばしば薬物に対する反応性やサイトカインの産生能も異なっている。またアレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜上皮層にはMC(T)細胞が増加しているが、その集積機序については未だ十分解明されていない。Stem cell factor(SCF)は肥満細胞の増殖、生存維持、遊走に重要な因子である。しかし我々の最近の研究結果から、鼻粘膜固有層のSCF濃度が鼻粘膜上皮層のそれに比して有意に高く、またRANTESの濃度が上皮層に高いことから、アレルギー性鼻炎患者鼻粘膜上皮層へのMC(T)細胞の浸潤調節においては、SCFよりRANTESは重要な遊走因子であると考えられる。また、ヒスタミン、トリプターゼなどの肥満細胞由来のメディエーターは上皮細胞からのRANTES産生を増強させることも判明した。アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜に存在するCD34陽性肥満細胞前駆細胞のFACS sortingにて単離し96穴においてSCFとIL-6の存在下で6-8週間培養し鼻粘膜の肥満細胞のcell lineを作成した。MC(TC)細胞をSCF50-200ng/mlの濃度で培養しChymaseとtryptaseの発現量をELISAにて検討しました。50ng/mlSCFを加えるとMC(TC)細胞がMC(T)に変化する。また、chymaseの量も抑制される。また、MC(TC)細胞がCCR3を発言しRANTESの刺激によって遊走した。この結果から、RANTESが鼻粘膜上皮層に増加しているMC(T)細胞の遊走因子であると明らかになった。一方、SCFがMC(T)とMC(TC) phenotypeの調節に関与していると示唆される。今後MC(T)とMC(TC)それぞれの機能的特徴を深く理解することにより将来新しい治療方法の開発が可能になると考えられる。
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