研究概要 |
真珠腫の骨破壊機序を考える際、骨吸収に不可欠な破骨細胞がヒト真珠腫ではほとんどみられないと言われている。我々は以前の科研において、真珠腫性中耳炎においてマクロファージが真珠腫上皮下に多量にみられることを観察した。そこで、マクロファージが破骨細胞様の活性を有するとの仮説を立てた。インフォームドコンセントのもとに、鼓室形成術の際、真珠腫上皮、上皮下肉芽組織、上皮に接する耳小骨を採取した。 (1)CD68抗体を用いて免疫染色したところ、上皮下に免疫染色陽性の多核細胞が多数染まり、マクロファージであることが確認された。(2)破骨細胞に発現するカテプシンKとTRAP(tartrate-resistant acid phosphatase)が、免疫染色およびin situ hybridizationでマクロファージにみられた。(3)RT-PCRにても上記2物質が確認された。(4)破骨細胞の骨表面の接着に必要なOPN(osteopontin)が、免疫組織化学およびin situ hybridizationにて、マクロファージにみられた。(5)真珠腫上皮および肉芽組織のサイトカイン、IL-1,IL-6,TNF-a,M-SCFなどの発現が、組織培養後の上清中にみられた。 以上より、炎症性サイトカインにより、骨髄からマクロファージが真珠腫上皮下に遊走され、破骨細胞様マクロファージ(osteoblast-like macrophage)になり、骨表面に吸着すると考えられた。
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