予後とQOLに優れた頭頸部癌治療としてのオーダーメイド化学療法の確立を目指して、5-FUとCDDPの奏効に関与する薬剤効果規定因子を研究した。 対象と方法:(1)頭頸部扁平上皮癌症例を対象に5FUとCDDPによる併用化学療法(FP)を導入化学療法として臓器機能温存を目的に行った。(2)切除例でHistoculture Drug Response Assay(HDRA)によるin vitro抗癌剤感受性試験と今後薬剤効果規定因子となりえるmRNAの発現レベルをreal-time RT-PCR法を用いて定量的検出を行い、その相関性を比較検討した。 結果:(1)未治療の頭頸部癌13例にFP療法を行い、内10例、77%でPR以上の奏効が得られた。(2)切除検体ではHER-2のmRNA発現レベルの上昇に従い、5FUならびにCDDPの腫瘍発育阻止率は低下する傾向を示し、5FUならびにCDDPの無効症例は有意にHER-2のmRNA発現レベルの上昇を認めた。COX-2においてはmRNA発現レベルの上昇に従い、5FUのinhibition indexは上昇する傾向を示したが、その意義は不明であり、今後症例数を増やしてさらに検討を進める必要性がある。 結語:5FUの代謝関連因子に対しては、mRNAの定量的検出と併せて酵素活性を測定する必要性があると思われた。さらに将来的には個々の患者の個性を分子標的で把握して、その患者に応じた化学療法を選択して治療を行うオーダーメイド化学療法の臨床試験の実施、ならびに分子標的の検出と選択におけるcDNAアレイの応用が望まれると思われる。
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