研究概要 |
ヒトβアクチンプロモーターでヒトMCP-1(hMCP-1)の発現を駆動するトランスジェニックマウス(Tgm)を3系統確立した。このうち2系統は血中に10ng/ml以上、1系統は5〜6ng/mlでhMCP-1蛋白をいずれも高濃度で発現していた。前者のhMCP-1 Tgmおよび正常C57BL/6マウスを用いて、ぶどう膜炎の抑制にケモカイン、特にMCP-1を標的とすることは可能か否かを、1)MCP-1 Tgmを用いた実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)マウスモデル、2)抗MCP-1抗体によるEAUの発症抑制の試み、の2つの系で検証した。その結果、1)については、non-Tgmに比較して、TgmでEAUの発症促進、あるいはピーク時における高いEAUスコアを示した。この現象は、MCP-1がぶどう膜炎発症抑制の標的となり得ることを示唆した。B6マウスにEAUを誘導し、抗マウスMCP-1抗体投与によって発症抑制が可能であるか検討したところ、2)抗体投与群でIRBPp1-20に対し強いT細胞応答および高いサイトカイン(TNF-α,IFN-γ,IL-5)産生を呈した。亢進したT細胞応答に呼応して高い病理組織スコアを示した。 以上の結果から、MCP-1を抗体で感作当初よりブロックすることはぶどう膜炎治療の目的にはそぐわないことが判明した。実験1)と2)の結果は矛盾するが、1)についてはMCP-1の構成的高発現により下流のMCP-1シグナルが伝達されないことがTgmでのEAU病態促進と考えると、両者の結果は一元的に理解できる。上記の現象にはTNF-αの産生亢進が基礎にあり、抗TNF-α抗体療法の基盤を考える上で重要な知見と考えられた。
|