研究課題/領域番号 |
13671816
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
志村 雅彦 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (20302135)
|
研究分担者 |
山口 克宏 東北大学, 医学部・附属病院, 助教授 (20200610)
富田 浩史 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40302088)
|
キーワード | パッチクランプ法 / 硝子体手術 / 浮遊細胞 / 網膜色素上皮細胞 / 内向き整流性カリウムチャネル / イオン透過性 |
研究概要 |
平成13年度には予定通りパッチクランプシステムの立ち上げに成功した。パッチアンプや顕微鏡は海外製のものを導入したため、購入から搬入までにかなりの期間を費やしてしまい、すべてが立ち上がるのに半年以上かかってしまった。溶液還流システムは2系統12本の短時間変更可能なものを考案し、蛍光色素水により良好な作動を確認した。硝子ピペットやノイズ除去の条件決めの後に実際に実験を開始することができた。はじめに網膜疾患(増殖硝子体網膜症)における硝子体手術により得られた細胞の機能を検討した。細胞の単離の条件決めが必要と思われたが、実際はすでに単離された状態になっており、スライドガラスステージ上に撒き、還流により流失しない時間を決定した。そのままパッチクランプをかけることができ、その静止膜電位も-50〜-70mVと細胞膜の生理機能が維持されていると思われる結果であった。硝子体中から得られた細胞は全てほぼ円形であり、顕微鏡下では2種類に大別できた。色素を有する細胞と色素を有しない細胞が認められた。各細胞に電位固定パッチクランプをし、保持電位0mVより-150mVから+150mVまで電位を変化させ、標準溶液下と5mM Ba2+存在下での電流の差を調べたところ内向き整流性K+チャネルが認められた。硝子体中に遊走し、増殖の起点となる細胞は増殖性の高い網膜色素細胞と考えられている。しかも網膜色素細胞の内向き整流性K+チャネルは他のそれとは異なるイオン透過性を有することが知られている。そのため硝子体内細胞の内向き整流性K+チャネルにおける一価陽イオンの透過性、特にRPEに特異的なRb+のK+に対する透過性を明らかにすることとした。硝子体から得られた二種類の細胞のうち、色素細胞は、ほぼ全例に渡りRb+のK+に対する透過性は6.24±1.38倍と通常の内向き整流性K+チャネルとは異なり高く、これはRPEの内向き整流性K+チャネルの性質と一致していた。一方無色素細胞のうちその半数はRb+のK+に対する透過性が低く、0.47±0.13倍であり、これは通常の内向き整流性K+チャネルに認められる性質であった。しかしながら無色素細胞のうちのおよそ3割はRb+のK+に対する透過性が高く5.27±0.92倍であった。以上より網膜疾患における硝子体中の浮腫細胞はいままでRPE起源とされてきたが、RPE以外の細胞が存在していることが示唆された。同時に硝子体中に浮遊しているRPEは色素を有していないものが存在することがわかった。これはRPEが増殖の局面にあるときに脱色素を見ることを考えると増殖変化を起こしていることが示唆されたといえる。
|