研究概要 |
眼科領域の腫瘍は診断、治療が困難であり、生命にも関わる重大な疾患である。本研究では眼科領域腫瘍の診断、治療の戦略決定システムの構築を目ざす。 腫瘍診断に関しては、眼窩腫瘍画像診断の3次元画像化を簡易的に行う方法を検討して、実用化の可能性が得られた。眼科領域腫瘍の診断、病態研究を分子レベルで行うため増殖制御因子であるtransforming growth factor-β(TGF-β)シグナル伝達の異常、遺伝子再構成の有無を調べた。山形大学医学部眼科で治療された腫瘍23症例を対象とした。腫瘍の悪性度を遺伝子の再構成により判定を試みた。リンパ組織系腫瘍での組織像、サイトカインの発現では鑑別ができなかったが、遺伝子再構成が見られたことにより悪性度の診断が可能であった。シグナルに関連する分子;TGF-βI型受容体、II型受容体、Smad2,3,4の発現を組織化学的に検討した。悪性度が高い腫瘍ではSmad2,3,4の発現異常が多く見られた。しかし遺伝子異常の検索を行ったところTGF-βII型受容体の遺伝子一塩基多型が示されたのは1例のみであった。腫瘍としては孤立性線維腫(solitary fibromatous tumor)の1例で。眼科領域の腫瘍におけるTGF-βシグナル伝達分子の遺伝子異常は他部の腫瘍に比較して低率であった。腫瘍治療戦略決定で最も重要である悪性度の診断おいて眼科領域の腫瘍ではTGF-βシグナル伝達系の分子における遺伝子一塩基多型現時点では有用性は認められなかった。一方、リンパ組織系眼科領域腫瘍では遺伝子の再構成を検討することはサイトカイン発現異常、組織型より有用である症例があり、診断、治療戦略決定に大変重要であった。
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