研究概要 |
加齢黄斑変性、特発性脈絡膜新生血管に代表される血管新生黄斑症と呼ばれる一群の疾患群では、脈絡膜新生血管からの滲出・出血や線維膜増殖により、黄斑部網膜に非可逆的な障害をもたらす。これらの疾患の視力予後は不良であり、特に加齢黄斑変性は高齢者の失明原因として急増してきている。脈絡膜新生血管の発生を予防し、また生じてしまった脈絡膜新生血管の増殖をいかに抑制するかが大きな課題である。脈絡膜新生血管の増殖には、血管内皮細胞のみならず間質成分も重要な働きを演じていると考えられる。zinc finger型転写因子BTEB2(basic transcription element binding protein 2)は血管病変の形成や平滑筋細胞増殖に関わり、血管増殖に深く関与する転写因子である。本研究では脈絡膜新生血管の発生と増殖におけるBTEB2の役割を解明することを目的としている。 1.摘出脈絡膜新生血管膜での解析 加齢黄斑変性3眼と特発性脈絡膜新生血管3眼の症例で、黄斑下手術により得られた脈絡膜新生血管膜を免疫組織学的に検討した。免疫組織染色は一次抗体としてBTEB2、SM1,Actin用い、ABC法にて行ない、免疫染色の程度を陰性から強陽性までの0〜3の4段階で評価した。その結果、全例で脈絡膜新生血管内にBTEB2を検出した。さらに、その多くでBTEB2は強く発現しており、脈絡膜新生血管は増殖能力の高い細胞で構成されていることがわかった。また、SM1も発現していることから、脈絡膜新生血管の間質構成細胞には平滑筋由来細胞が含まれていることが示された。 2.動物実験での解析 有色マウス眼を用いて、レーザーで強度網膜光凝固を行い脈絡膜新生血管モデルを作成して、免疫組織染色でBTEB2の発現を検討した。その結果、BTEB2の発現がみられた。
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