研究概要 |
高次波面収差や不正乱視は,光学系の質を論じる上で極めて重要な要素であるが,眼科においてそれらに関する定量的な議論は,従来ほとんど行われていなかった.我々は,眼全体および角膜における波面収差を定量的に解析する方法を開発すること,角膜ですでに確立した不正乱視の定量方法を眼全体に応用すること,角膜前面のみならず後面の光学的性質を検討することを目的に,本研究を行った. まず,レフラクトメータと波面センサーを組み合わせ,網膜からの出射光を多数のlensletにて測定する装置を作成.得られたデータを補償光学に基づいてZernike多項式に展開し,そのうちの3次および5次の高次波面収差からコマ収差を,4次および6次から球面収差を算出した.波面センサーで得られたデータは別にフーリエ解析にも用い,0次成分から球面成分を,2次成分から正乱視成分,および不正乱視成分を分離定量した.これらの不正乱視や収差の年齢変化,円錐角膜等の疾患による変化,角膜移植眼における状態を臨床データから解析し,加えてコントラスト感度との関連を検討した. 臨床データ解析として,photorefractive keratectomy(PRK)およびlaser in situ keratomileusis(LASIK)術後患者について,眼球全体の高次波面収差および不正乱視を計測し,術前との比較,経時変化,コントラスト感度との関連を検討した.また同時に,角膜後面の形状変化を分析し,後面の光学的性質が屈折矯正手術によってどのような影響を受けているか報告した.白内障手術眼において,角膜の収差と眼全体の収差を比較することにより,水晶体除去および眼内レンズ挿入によって眼の光学特性がどのように変化するのか検討した.
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