研究概要 |
前年度までに我々は,眼球全体の高次波面収差や角膜前面に起因する不正乱視を定量化する方法を確立した.今年度はこれらの方法を種々の疾患,病態,手術方法に応用し,光学系の質を論じる上で極めて重要な要素である波面収差の定量的解析,角膜前面での不正乱視の定量,角膜後面の光学的性質の解析を行った. 2002年度に論文として発表したデータは下記のごとくである. 角膜形状解析データをフーリエ解析し,その不正乱視成分及び球面成分を経時的に評価することによって,円錐角膜の経年変化を定量的に解析しうることを初めて明らかにした(Ophthalmology 2002;109:339-342).白内障眼において全屈折の高次収差が増加していること(JCRS 2002;28:438-444),そのパターンが核白内障と皮質白内障で異なることを初めて報告した(AJO 2002;134:1-9).角膜移植後の抜糸によって角膜形状が変化することは以前から知られていたが,我々はトポグラフィのフーリエ解析によってその変化を定量化し,報告した(Cornea 2002;21-256-259).屈折矯正手術LASIKにおいて,近視の矯正量が大きいほど,角膜の高次収差が大きく増加することを見いだした(Ophthalmology 2002;109:1154-1158).角膜前後面の形状解析において,角膜の前後偏位を正確に判定できるよう,カラーコードマップのスケールを基準化した(Ophthalmology 2002;109:1298-1302).屈折矯正手術PRKにおいて,角膜後面の前方偏位の経時変化を初めて報告した(Arch Ophthalmol 2002;120:896-900).白内障手術後の偽調節に角膜のコマ収差が関与していること,コマ収差が全くない眼では屈折異常の影響が大きくなることを明らかにした(IOVS 2002;43:2882-2886).
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