研究概要 |
網膜神経細胞死へのMuller細胞の関与に関して研究を行った。まず、rat眼を摘出した後、網膜を細切およびトリプシン・コラゲナーゼ処理により分離し継代することにより培養Muller細胞を得、形態および特異抗体による染色により確認した。この培養Muller細胞を酸素濃度可変の培養器で低酸素の状態で数時間培養する低酸素負荷下および高圧培養器による高圧ストレス負荷下で培養し、BDNF, CNTF, GDNF等の神経栄養因子のメッセンジャーRNA発現程度を解析した。メッセンジャーRNAの定量はprobeを用いた定量的RT-PCRにより行った。コントロールとしてはG3PDHを用いた。その結果、2時間の低酸素下培養(5%O_2)によって神経栄養因子の発現はG3PDHに比較して低下し、その程度は低酸素から通常の培養環境に戻すことにより徐々に元に戻り、さらに、その後、コントロールよりも有意に上昇した。また、高圧ストレスにより神経栄養因子の発現はG3PDHに比較して低下し、その程度は高圧下から通常の培養環境に戻すことにより徐々に元に戻り、さらにその後、増加した。さらに、高圧ストレス下においてのNOSおよびNOの変化についても検討したところ、NOS-2mRNA発現およびNOの産生が増加するという結果を得た。一方、同細胞に薬剤負荷を行った結果、ベタキソロールおよびイガニジピンの添加によりBDNF, CNTFの発現増加を認めた。以上の結果は低酸素および高圧ストレスはMuller細胞より分泌される神経栄養因子の発現を変化させ、網膜神経細胞死に間接的に関与していることが明らかになり、また、いくつかの薬剤はMuller細胞より分泌される神経栄養因子の発現を増加させることにより網膜神経細胞に対して神経保護作用を持つことが明らかとなった。
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