文部科学省科学研究費補助金基盤研究(C)「網膜電図P3、derived P2モデルおよびON/OFF反応を用いた網膜機能の評価」(平成13-15年度)(課題番号:13671828)では、平成11-12年度の奨励研究Aにおける杆体a波(P3)モデルの臨床ERG評価への導入を発展させ、錐体a波(P3)モデル、またERG元波形よりP3モデルを引き算することによって得られるderived P2モデル、long flash光刺激に対するON/OFF反応の解析を加え、網膜機能の詳細な評価を試みた。 まず網膜電図(以下ERG)測定装置の検証(刺激輝度の精密な測光、刺激時間の調整など)を行った。次に正常被験者30人のERG測定を行い、従来のa波、b波、OP波の振幅・頂点潜時、杆体および錐体モデルのパラメーター(S、td、Rmp3)、また暗順応下ERGにおけるderived P2(ERG元波形より杆体P3モデルを引いたもの)、long flash光刺激に対するON/OFF反応の振幅・頂点潜時の平均値と標準偏差を計算し、当科における正常値を決定した。患者群でも同様に測定を行い、その測定値と正常値を比較した。解析にあたっては、その他の眼科的検査結果(視力、視野、眼底所見、暗順応所見、遺伝子解析時果など)とも合わせて総合的に評価した。対象疾患として、網膜色素変性症、錐体ジストロフィー、先天網膜分離症、小口病、クリスタリン網膜症、網膜中心静脈閉塞症、ビタミンA欠乏症などに及んだ。 客観的に患者の視機能を評価し、予後を推定し、患者に伝えることは臨床的に極めて大切なことである。また将来応用が期待される網膜変性疾患に対する遺伝子治療や、網膜色素変性症や加齢性黄斑変性症などに対する人工網膜を含めた移植治療において、上記のERG波形解析は治療の適応を決める際重要な情報を提供することができる。
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