研究概要 |
培養網膜神経節細胞におけるグルタミ酸神経細胞死は、グルタミン酸受容体のNMDA受容体ではなく、AMPA-KA受容体を介することを報告してきた。培養網膜神経節細胞にはAMPA受容体(GluR1-GluR4)のすべてのサブユニットが発現しており、細胞内カルシウム流入は必ずしもGluR2の発現に依存するものではないことをつきとめた。この培養網膜神経節細胞系を用いて、アルツハイマー病治療薬である塩酸ドネペジルのグルタミン酸神経細胞死の抑制効果について検討した。生後6から8日齢のラット網膜からtwo-step immunopanning法で網膜神経節細胞を単離し、神経栄養因子およびフォルスコリンを含む無血清培地で培養した。培養直後から25μMグルタミン酸(Glu)と塩酸ドネペジル(Dnp,10^<-7>M〜10^<-5>M)を同時に投与し培養3日目にcalcein染色を行って細胞の生存率を検討した。Gluによる神経細胞死は、AMPA-KA受容体括抗薬でほぼ完全に抑制された。GluとDnpの同時投与群では用量依存性に細胞死が抑制された(生存率:Glu単独群vs.Glu+Dnp(10^<-5>M)61.7±9.4%vs.91.7±14.5%、平均値±標準偏差、n=9、p<0.001)。培養網膜神経節細胞において、塩酸ドネペジルはグルタミン酸神経細胞死を制御することが明らかとなった。塩酸ドネペジルはグルタミン酸による細胞内カルシウム流入を抑制するわけではなく、細胞内カルシウム流入後の細胞内シグナル伝達やアポトーシス関連遺伝子に作用をしている可能性が示唆される。
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