培養網膜神経節細胞においてa-amino-3-hydroxy-5-methylisoxazole-4-propionate(AMPA)型グルタミン酸受容体サブユニットが発現するかを検討した。生後6から8日齢のラット網膜から既報に準じ、two-step immunopanning法で網膜神経節細胞を単離し、神経栄養因子およびフォルスコリンを含む無血清培地で培養した。培養後1から7日目で細胞を固定し、AMPA型グルタミン酸受容体サブユニット(GluR1-4)に対する特異的抗体および神経細胞の細胞体および樹状突起に発現するmicrotubule-associated protein(MAP)2に対する特異的抗体を用いて、免疫組織化学的手法でその発現を経時的に観察した。網膜神経節細胞は、神経栄養因子を含む無血清培地で神経突起を徐々に伸展させた。MAP2蛋白は、培養1日目から細胞体および樹状突起に発現していた。すべてのAMPA型グルタミン酸受容体サブユニット蛋白(GluR1-4)は、培養1日目ではわずかに細胞体に発現するのみであったが、神経突起の伸展に伴って細胞体のみならず樹状突起に発現がみられた。また、GluR2蛋白の発現にかかわらずグルタミン酸による細胞内カルシウム流入が生じていることをつきとめた。以上より、培養網膜神経節細胞においてすべてのAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットは、神経突起の伸展に伴い細胞体および樹状突起に発現し、GluR2蛋白の発現は必ずしもカルシウム流入を制御するものではないことが明らかとなった。 本研究において、AMPA型受容体の発現がin vivoとin vitroでほぼ同じであるということが示された。同時にたとえGluR2蛋白が発現していてもAMPA型受容体を介してカルシウムイオンが細胞内に流入し、細胞死を引き起こしうるということが明らかとなった。また、神経突起の伸展に不可欠であるとされるMAP2蛋白の発現とAMPA型受容体の発現が一致していたことから少なくともAMPA型受容体は神経突起の退縮に関係していることが示唆された。
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