研究概要 |
1.斜視関連遺伝子の候補領域の検索 斜視関連遺伝子の候補領域を連鎖解析を用いて検索した。内斜視、外斜視の少なくとも2名の罹患同胞対をもつ30核家族の各構成員から得た10mLの血液からゲノムDNAを分離した。全染色体にわたる10cM間隔のマイクロサテライト領域(400マーカー)をPCRで増幅した。Gene Hunterソフトエアを用いて罹患同胞対解析、および多家系のノンパラメトリック連鎖解析を行い、ロッドスコアとノンパラメトリック連鎖スコア(NPL)をそれぞれ計算した。罹患同胞対解析では全てのロッドスコアは0.25程度であった。ノンパラメトリック連鎖解析では、NPLが1.34程度のピーク部位が染色体1,2,4,7,10,15,16のそれぞれに1ヵ所、染色体3,9,11,12,18,20のそれぞれに2ヵ所に認められた。ノンパラメトリック連鎖解析により斜視関連遺伝子の候補領域が推定できた。 2.斜視外眼筋に特異的に発現する蛋白の検索 斜視手術時に採取した外眼筋の基質金属蛋白分解酵素(MMP)と内因性阻害蛋白(TIMP)の発現を検討した。採取した外眼筋を凍結破砕し、分離したRNAから放射標識したcDNAプローブを合成し、gene array nylon membraneとハイブリダイズした。酵素免疫法で筋組織中のTIMP-1,TIMP-2,骨形成因子(BMP)-4を測定した。外直筋と内直筋のTIMP-1,TIMP-2,MMP-2,BMP-4の発現は異なり、外直筋では内直筋に比してTIMP-1,TIMP-2,BMP-4量は有意に少なく、MMP-2は有意に多かった。この発現量の差は、斜視手術後の創傷治癒過程に影響する可能性があると結論した。
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