研究概要 |
間欠性外斜視の切除外眼筋におけるアグリカン量と臨床所見の関係 斜視患者の外眼筋に含有される細胞外マトリックスである、アグリカン、フィブロネクチン、ラミニンの役割を検討することを目的に研究をおこなった。47例(男性21例、女性26例、平均年齢23歳)の手術中に得た間欠性外斜視の内直筋を材料に、それを液体窒素下で凍結粉砕して可溶化し,酵素免疫法を用いて上述のアグリカン、フィブロネクチン、ラミニン量を測定した。アグリカンの計測にはHuman aggrecan用測定用キット、フィブロネクチン、ラミニンの計測にはHuman fibronectin測定用キットとHuman laminin測定用キットを用いた。酵素免疫法で得られたタンパク濃度から筋肉1mmあたりのアグリカン、フィブロネクチン、ラミニンの量と患者の年齢、斜視角、および屈折異常、手術前後の眼位、両眼視、病型、家族歴、妊娠分娩時の異常のパラメータとの関連を解析した。その結果、外眼筋1mmあたりのアグリカン量は年齢と有意な相関を示し(p<0.0001)加齢とともに減少したが、フィブロネクチンやラミニン量は年齢との相関がみられなかった。間欠性外斜視の病型との比較では、アグリカン量は輻湊不全型よりも基礎型に多い傾向がみられた(p=0.0538)。この結果から、アグリカン量は間欠性外斜視の運動面に関連すると推察した。また本研究で見出したアグリカン量が加齢とともに減少する結果は、加齢にともない外眼筋の張力変化が生じること、さらに手術により強膜組織と外眼筋腱との癒着によって創傷が治癒する過程に細胞外マトリックスのひとつであるアグリカンが何らかの影響を与える可能性があると推察した。
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