目的:重症の網膜硝子体疾患において眼内シリコンオイル(SO)タンポナーデは重要な治療手段の一つである。しかしSOの視神経に及ぼす副作用については未だ不明な点が多い。今回我々は、SOを注入眼の視神経の形態学的変化および、SOの視神経への取り込みの有無について検討を行った。方法:我々はgas-mediated vitreous compression後の白色家兎眼に、医用SO及び乳化SOを注入し(それぞれM群、E群とする)、光学顕微鏡(光顕)、透過型電子顕微鏡(電顕)、エネルギー分散X線分析器(EDXA)を用いて検討を行った。また、これらの所見を、手術操作を行っていない眼(C群)の所見及びgas-mediated vitreous compressionのみを行っている眼(G群)の所見と比較した。結果:SO注入群では視神経内に光顕及び電顕にて、空胞様構造物が観察された。電顕を用いた観察では、G群でミエリン構造が一部崩れ、M群とE群ではミエリン構造が著明に破壊され、グリア組織に入れ替わっている所見が見られた。SO注入群では、EDXA点分析にてシリコンが空胞様構造物の電子密度の濃い辺縁部に認められた。しかし電子密度の濃くない辺縁部には認められなかった。一方、C群とG群ではシリコンは認められなかった。EDXA面分析を用いた検討では、M群とE群間にシリコンの分布密度に差は見られなかった。 結論:EDXAにより、SO注入眼では、SOが視神経に取り込まれることが証明された。M群とE群では、シリコンの分布密度に差は見られなかった。SOの視神経への取り込みが視神経萎縮の原因になっている可能性が示唆された。
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