研究概要 |
神経栄養因子であるBDNF(brain-derived neurotrophic factor)、CNTF(cilially neurotrophic factor)をもちい、生体系にてその効果を検証した。実験動物ラットの網膜神経節細胞はあらかじめDiIにて蛍光標識して検討に用いた。麻酔下で眼窩内で片側の視神経を完全に切断し、それぞれの切断端をcollagen gelを封入した人工血管内に留置し約2週問飼育した。硝子体注入:30G歯科用注射針をもちいて硝子体腔に再生促進因子を注入。視神経移植:移植された人工血管内にcollagen gelと共に再生促進因子、培養したグリア細胞等を注入した。眼球を摘出後、網膜を単離し、標識された神経節細胞を蛍光顕微鏡にて観察、その生存数を計測した。さらに動物を潅流固定後、視神経-視神経接合部の組織標本を作成し、再生神経束を観察し、さらに変性・神経再生に係わる種々の物質(c-jun, c-fos, GAP-43, L1,etc.)の局在を免疫組織染色にて検証した。再生軸索が人工血管内の視神経の接合部位を越えて上丘に向かうかどうかを検討するために蛍光色素fast blueを接合部より遠位側(末梢側)の視神経または上丘に直接注入し、軸索再生した神経節細胞を再標識し、蛍光顕微鏡下で二重染色された神経節細胞数を観察、細胞数を計測した。その結果、いずれのfactorも以前われわれの培養系での検証と同様に、生体系においても網膜神経節細胞の細胞死抑止、軸索再生促進因子として作用することが確かめられた。また、われわれが新たに見いだした肝由来神経活性化因子や他の神経再生促進因子が同様に神経節細胞の軸索再生を促進するか否かを探求する。今後さらに、これら人工血管をもちいた視神経移植動物を長期飼育し、視覚機能再建がみられたかを健側視神経切断後に行動実験にて検証する予定である。
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