研究概要 |
アポトーシス、プログラムされた細胞死は、多彩な組織の正常発生過程において生理学的に起きている重要なメカニズムである。眼発生学的構造におけるアポトーシスの役割についてはまだ十分な説明がされていない。眼発生学的構造の異常発生は重症の眼先天異常を発生する。これら眼奇形の発生を予防するための有効な治療法を得るためには、まず眼発生学的構造の正常発生のメカニズムを知ることが重要である。以上のような理由で、今回我々は本研究において,眼発生学的構造の中で水晶体初期発生に着目した。水晶体発生メカニズムを明確にするために、マウスの水晶体初期発生におけるアポトーシスによる細胞死を観察した。実験動物として、C57BL/6NJCLマウスを使用し、アポトーシスの検出にはterminaldeoxynucleotidyl transferase (TdT)-mediated deoxy uridine triphosphate (dUTP)-biotin nick end labeling (TUNEL)法を用い、各切片を光学顕微鏡で観察した。水晶体板が水晶体窩、水晶体胞へと陥入していく辺縁の表面外胚葉、退縮期の水晶体茎、水晶体胞腔内の胎仔表皮細胞にTUNEL陽性細胞が観察された。アポトーシスによる細胞死は、水晶体板の陥入、水晶体茎の退縮、水晶体胞腔内胎仔表皮細胞の消失に関与していると考えられた。
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