研究概要 |
マクロファージの酸化還元状態が実験的自己免疫ぶどう膜網膜炎(以下EAU)に及ぼす影響を調べるため以下の実験を行った。EAUはLewisラット(10週令)を用い惹起するために抗原として牛網膜抽質抗原であるIRBPを用いた。酸化型マクロファージを誘導する薬剤として、BSO(L-Buthionine-[S,R]-Sulfoximine)を使用した。まず実験1としてBSOの至適濃度を調べるために、投与するBSOの濃度をRat1匹250gと考えて25mg/kg、50mg/kg、100mg/kgと分けて行った。雌Lewisラットに対し抗原を免疫する12時間前と12時間後に各々の濃度のBSOを腹腔内投与した。コントロールにはBSOの溶媒として用いたリン酸緩衝液PBSを使用した。抗原の免疫はIRBP50μgを等量の完全フロインドアジュバントと混和したものをラットの足蹠皮下に接種した。免疫後8日目より細隙灯顕微鏡で前眼部炎症を連日観察し、免疫後16日目には眼球を摘出し病理組織学的にその重症度を判定しスコアー化した。PBSを投与したコントロール群では9日目よりEAUが発症し,12日目に炎症のピークを示した。BSO投与群においてもEAUの発症は認められたが、25mg/kg投与群でコントロール群に比べてEAUの発症抑制が認められた。しかしBSO投与群とコントロール群の間に有意な差を認める事はできなかった。病理組織標本ではコントロール群で網膜血管炎と網膜,脈絡膜への細胞浸潤を伴う網膜の著しい破壊が観察された。BSO投与群では網膜,脈絡膜にわずかな細胞浸潤を認めるのみで,組織破壊は認められなかった。また織学的にみた重症度でもBSO25mg/kg群でEAUの発症抑制が認められた。 実験1よりEAUへのBSOの影響は25mg/kg投与群で最もみられたので、実験2として投与するBSOをさらに減量して行った。またBSOの影響を明確にするため免疫するIRBP量を50μgから10μgに減量し、実験1と同様に完全フロインドアジュバントと混和したものをラットの足蹠皮下に接種した。BSOは5mg/kg、10mg/kg、20mg/kgとし、実験1と同様に腹腔内投与しEAUの発症を観察した。EAUは免疫後10日目より観察されたが、接種する抗原量を減らしたためと考えられるがEAUの重症度はすべての群で軽減していた。そのため細隙灯顕微鏡所見、病理学的にも各群に差は認められなかった。
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