本研究は、マウスの眼発生各期におけるEpimorphinの発現動態および角膜の損傷治癒課程におけるEpimorphinの役割について、形態的、分子病理学的に解明する事を目的とした。 胎生10.5日では陥入した水晶体胞周囲にEpimorphinの発現が観察された。胎生12日では、眼球結膜の上皮細胞下に顆粒状の陽性所見を認めた。さらに形成過程の角膜上皮下にも弱陽性の反応が観察された。胎生13日では角膜の分化、形成に伴い角膜実質の繊維芽細胞に陽性所見が観察された。さらに上皮下の基底膜にもEpimorphinの存在が確認された。胎生16日では、角膜実質の細胞外基質にEpimorphinの存在が認められる様になった。その後、次第に角膜実質のEpimorphinの陽性強度が高まり、強陽性の所見は新生仔から成獣に至るまで持続した、成獣マウス角膜におけるEpimorphinの分布を共焦点レーザー顕微鏡で精細に検討したところ、上皮細胞基底層にその陽性所見を認めた。 上皮擦過による上皮損傷の治癒過程によるEpimorphinの発現の変化を検索したところ、上皮擦過後2日目では擦過部の実質表面にEpimorphinの強い陽性所見を認めた。その後、急速に再生上皮の被覆がみられた。 以上の結果からEpimorphinは眼球形成に関与する事が明らかとなった。角膜実質においては、角膜特有なコラーゲン繊維の層状構造形成時期とほぼ一致してEpimorphinが実質中の細胞外基質に発現することから実質の形態形成に関与している可能性が認められた。さらに成獣においても恒常的に強い発現が認められたことは、細胞外基質の構成成分として角膜の恒常性の維持に関与している可能性が示唆された。再生上皮細胞の接着、分化、増殖に角膜実質細胞由来のEpimorphinの関与が示唆された。 分子生物的な検索も併せて施行したが現在まで安定した結果を得るに至っていない。今後これについて研究を進め、本報告書の結果と併せて論文発表をする予定である。
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