研究概要 |
【背景】我々はこれまでの研究で、PG-M/versicanは視細胞層に存在しない事を示した。しかし一方で、PG-M/versican抗体MY174は、特異的に視細胞層を染色した。【目的】MY174の視細脂層における真の抗原分子の解析と機能解析の試みた。【方法】MY174を一次抗体として、ニワトリ網膜の染色を行った。ニワトリ網膜抽出サンプルに各種酵素処理を行った後、ウエスタンブロット法にて抗原分子の生化学的特性を調べた。精製サンプルより、アミノ酸配列を決め、クローニング作業により塩基配列を決めた。発生過程での発現を、ノザン、ウエスタン法で調べ網膜接着力の発現と比較した。また、様々な網膜内分子との結合につき、検討を行った。【結果】MY174抗原は視細胞外マトリックス分子であった。分子量150kDaのコンドロイチン硫酸鎖を持たない糖蛋白は、シアル酸に富んだN-、0-オリゴ糖鎖を大量に持っていた。シアル酸および0-オリゴ糖の酵素処理により、MY174の抗原性は消失した。精製物質のペプチド解析およびその後のクローニングより、本分子は全長2787塩基、928アミノ酸より構成されるSPACR分子である事が判明した。本分子の発現は、胎生15日目以降の網膜接着力の上昇とともに増加する。SPACRは、網膜内に存在する、いくつかの分子と結合する事が判明した。【考察と結論】MY174の視細胞層での抗原分子はニワトリSPACR分子であった。MY174はIgMクラスモノクローナル抗体で、PG-M/versicanと共通の糖鎖が抗原性に関与するらしい。SPACRは、発生過程において網膜接着力の上昇とともに発現が増加し、また、ある種の分子群との結合活性が確認された。この作用が、本分子の機能的役割を果たし、網膜分化、接着などに関わると推察された。これらの結果は、Zako M, Iwaki M, Yoneda M, Miyaishi O, Zhao J, Suzuki Y, Takeuchi M, Miyake G, Ikagawa H, Kimata K. Molecular cloning and characterization of chick sialoprotein associated with cones and rods, a developmentally regulated glycoprotein of interphotoreceptor matrix.(J Biol Chem. 2002;277:25592-25600)にて公表した。
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