研究概要 |
高濃度酸素負荷によりマウス網膜の視細胞が脱落し、網膜の菲薄化がみられる事がこれまでの実験により分かった。そこで我々はこの網膜視細胞の脱落がアポトーシスによるものである事を証明し、そしてどういう経路によりアポトーシスが引き起こされているのかを研究した。マウスを酸素濃度75%に調節したBOXにいれ、高濃度酸素に1週間から3週間暴露し、各時点において眼球を摘出し網膜のみを単離した。また眼球の凍結薄切切片を作成した。単離した網膜からDNAを抽出し免疫電気泳動を行うとDNAの断片化が明かとなった。また凍結薄切切片を用いてTUNEL染色を行うと高濃度酸素負荷により網膜外層にTUNEL陽性細胞が著明に増加しているのがみられた。これらのことから網膜視細胞が高濃度酸素によりアポトーシスに陥っている事が分かった。さらにどういう経路を介しているのかを調べるために、網膜から蛋白を抽出してアポトーシス関連蛋白の抗体を用いてWestern blottingを行い蛋白量について検討した。高濃度酸素負荷によりBaxの増加とBcl-2の減少がみられた。これら2つは拮抗する蛋白であるのでこれらが網膜視細胞のアポトーシスの制御に関わっていると考えられる。また種々のアポトーシス関連蛋白の発現をm-RNAを抽出してRT-PCRを施行し検討してみた。Caspase3のm-RNAは高濃度酸素負荷により増加し、Baxも増加を認めた。一方Bcl-2は高濃度酸素負荷1週で増加するが、2週で減少した。これらのことから視細胞のアポトーシスはcaspase dependentでBax, Bcl-2の経路が関与している事が考えられた。また、Bax, Bcl-2のノックアウトマウスの網膜を同様にして検討してみたが、明らかな視細胞の変性などはみられなかった。
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