方法:鎖肛ブタ家系を維持し、離れた系であるメイシャンブタを導入して純系に近い鎖肛ブタに対し人工授精を行った。得られたF1を鎖肛ブタに戻し交配し(backcross)、またF1同志も交配した(intercross)。以上の鎖肛メス雌ブタ、メイシャンブタ、F1、戻し交配に使った鎖肛ブタ、戻し交配で発症した鎖肛ブタからDNAを抽出し、ブタの各染色体上に分布する92個の多型の証明されているマイクロサテライトマーカーを用いてABI 377 sequencerにて遺伝子のパターンを調べた。Linkage解析はCRI-MAP 2.4を用いて行った。 結果と考察:61.9%と高頻度に鎖肛が発症する鎖肛ブタ家系のブタと正常メイシャンブタとの交配により出生したF1での鎖肛発症率が0%であることから1つまたはそれ以上の劣性遺伝が鎖肛の発症と関連していることが明らかなった。F1同志の交配での発症率が1.5%と低率であることとbackcrossでの発症率が8.0%であることから、鎖肛の発症には複数の遺伝子が関与していることが示唆された。Linkage解析で得られた鎖肛遺伝子と連鎖するブタのmicrosatelliteマーカーSW2072はブタ染色体15q13上にある。これヒト・ブタ比較遺伝子マップによるとヒト染色体2q14に相当する。マウスにおける鎖肛遺伝子の解析によるとGLI2(Sonic Hedgehog responsive transcription factorをコードするlocus)との関連が指摘されており、この領域はヒトでは2q14上にあり我々の鎖肛ブタの遺伝子解析による15q13領域に相当する。このGLI2遺伝子はantero-posterior axisの形成や、hindgutの発生におけるShh(Sonic hedgehog)の機能に重要とされ、直腸肛門の発生以外にもさらに重要な機能を持つことが予測されさらに詳細な働きが解明する必要がある。
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