胎児麻酔が出生後の生体反応に与える影響に関する実験的・臨床的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671869
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 山内 健 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (50294921)
• 研究分担者: 中村 晶俊 九州大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床) ; 田口 智章 九州大学, 医学部・附属病院, 助教授 (20197247) ; 水田 祥代 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30038856)
• キーワード: 胎児麻酔 / 生体反応 / サイトカイン / コルチゾール / 先天性横隔膜ヘルニア / 新生児外科

研究概要

1)実験的検討:新生仔ラットにおいて胎児麻酔が出生後の生体反応に及ぼす影響に関する検討
予備実験として、妊娠ラット(n=10)にペントバルビタール腹腔内投与による麻酔で帝王切開を行い、娩出させた新生仔ラットを気管切開により挿管し人工呼吸管理を行った。現在、3時間まで生存させることが可能となり、生後1、2、3時間後に犠死させ血液を採取した。炎症性サイトカインであるIL-1β,IL-6と抗炎症性サイトカインのIL-IRa, IL-10、血管透過性の指標であるVEGF(Vaso-Endothelial Grouwth Factor)をELISA法により測定中である。今後はNarcoticsにより全身麻酔を行い、さらに長時間、呼吸管理を行うとともに、コントロールとして母体へのエーテル麻酔のみで帝王切開により出生させた新生仔ラット(自発呼吸)および経膣分娩で出生した新生仔ラットについても血中サイトカイン変動を検討する。
2)臨床的検討:先天性横隔膜ヘルニアにて胎児麻酔が出生後の生体反応に及ぼす影響に関する検討
当院周産母子センターにおいて、胎児超音波検査にて肺/胸郭断面積比が0.20未満と高度肺低形成が疑われた先天性横隔膜ヘルニア症例10例に対して胎児麻酔を行った。そのうち根治術が行われた6例について術後の血中サイトカイン(IL-6、IL-10)濃度および内分泌反応の指標としての血中コルチゾール値を測定した。胎児麻酔非施行の先天性横隔膜ヘルニア症例はなかったため、コントロールとして出生後に開胸開腹手術を行った他の小児外科疾患12例を用いた。その結果、IL-6とコルチゾールは術前値および術後の頂値が、コントロール群に比べ胎児麻酔群で有意に低値をとっていた。以上より胎児麻酔は分娩ストレスおよび手術侵襲に対する生体反応を軽減させうることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Suita S, Yamanouchi T, Masumoto K, Ogita K, Nakamura M, Taguchi S.: "Changing profile of parenteral nutrition in pediatric surgery : A 30-year experience at one institute"Surgery. 131. S275-S282 (2002)
• [文献書誌] Taguchi T, Suita S.: "Segmental small-intestinal transplantation : A comparison of jejunal and ileal grafts"Surgery. 131. S294-S300 (2001)
• [文献書誌] Nakamura M, Suita S, Yamanouchi T, Kubota M, Shono K, Ogita K, Taguchi S: "Effect of Liver Transplantation on Nutritional Status in Patients with Biliary Atresia. -How to Assess ? -"Asian Journal of Surgery. 24. 347-352 (2001)
• [文献書誌] 山内 健, 水田祥代, Tibboel D: "新生児,乳児における腸粘膜Potential Differenceを用いた腸管機能評価"静脈・経腸栄養. 16(2). 61-66 (2001)
• [文献書誌] 山内 健, 水田祥代: "侵襲期の栄養アセスメント-小児手術"栄養・評価と治療. 18(3). 403-408 (2001)
• [文献書誌] 中村晶俊, 山内 健, 田口智章, 荻田桂子, 水田祥代: "先天性横隔膜ヘルニアに合併した新生児遷延性肺高血圧症に対しPohsphodiesterase III阻害薬が有効であった一例"日小外会誌. 37. 1073-1077 (2001)