研究分担者 |
増本 幸二 九州大学, 医学部付属病院, 助手 (20343329)
田口 智章 九州大学, 医学部付属病院, 助教授 (20197247)
水田 祥代 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30038856)
上杉 達 九州大学, 医学部付属病院, 医員
中村 晶俊 九州大学, 医学部付属病院, 医員
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研究概要 |
【実験的研究】 <対象・方法>妊娠ラットに塩酸モルヒネ(3kg/kg))を腹腔内投与後、ペントバルビタールにて全身麻酔を行い、帝王切開により胎仔を娩出。臍帯クランプ前に24G血管内留置針外筒を用いて気管内挿管。その後、人工呼吸管理を(呼吸条件Fi02 1.0,PEEP/PIP=2/15,HR40)3時間施行した(FA群)。コントロール群(C群)では、塩酸モルヒネ投与を行わなかった。新生仔ラットの血液および気管支肺胞洗浄液を出生直後、3時間後に採取し、IL-6とIL-10の血中濃度およびTNF-αの気管支肺胞洗浄液中濃度をELISA法により測定し、比較検討した。 <結果>C群の新生仔ラット血中IL-6値は出生直後74.1±19.8pg/ml、3時間後183.0±66.5pg/mlと3時間後に有意に上昇していたが、FA群では出生直後81.7±46.5pg/ml、3時間後86.4±46.8pg/mlとIL-6値の上昇がみられず、モルヒネによる抑制効果と考えられた。IL-10に関しては両群ともに上昇し有意差を認めなかった。一方、気管支肺胞洗浄液中TNF-α濃度は、出生直後において、FA群がC群に比べ、低値の傾向を示したが、有意差は認められなかった。 【臨床的研究】 <対象・方法>母体への塩酸モルヒネ(20〜30mg)投与による胎児麻酔下に帝王切開にて出生した横隔膜ヘルニア根治術症例(FA群6例、全例開腹)と帝王切開にて出生した開腹術症例(non-FA群9例)を比較検討した。両群とも出生後24時間以内に手術が施行された。手術侵襲度は0xford Surgical Stress Scale(SSS)を用いて評価した。生体反応の評価項目として、血中CRP値(術前、術後1、2、3日目)、血中コルチソール値(術前、術後0、6、12、24時間)、血中IL-6値(術前、術後0、3、6、12、24時間)を測定した。 <結果>SSSには群間に差はみられなかった。CRPでは術前に差はなく、術後はFA群がnon-FA群よりも低値で推移し、術後2日日に有意な差(FA群:0.77±0.21mg/dl;non-FA群3.68±0.84mg/dl,p=0.0161)を認めた。コルチゾールは、術前よりFA群がnon-FA群より低値であり、non-FA群が術直後にピーク(25.0±2.5μg/dl)となるのに対し、FA群では明確なピークを認めなかった(術直後2.9±0.5μg/dl,p<0.0001 vs non-FA群)。IL-6では術前は、FA群がnon-FA群より低い傾向がみられ、non-FA群では術直後又は12時間後にピーク(462.5±82.5pg/gl)となるのに対し、FA群では術直後にわずかに上昇したが(84.5±27.2pg/ml,p=0.0032 vs non-FA群)、以後も低値で推移した。胎児麻酔により術後のCEP、コルチゾール、IL-6の上昇は抑制されており、胎児麻酔が手術侵襲に対する生体反応を制御する事が示唆された。
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