研究分担者 |
関堂 充 北海道大学, 医学部附属病院, 医員
井川 浩晴 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10232159)
杉原 平樹 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20002157)
崎山 幸雄 北海道大学, 大学院・医学研究科, 寄附講座・教員 (80133734)
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研究概要 |
唇顎口蓋裂は日本では500人に1人の割合で出生しているが,その発生原因はいまだ解明されていない。原因としては単一の遺伝子ではなく複数の遺伝子が関連しあい,さらに環境因子が加味していると考えられている。動物研究において,Lhx8遺伝子のノックアウトマウスを用いて口蓋裂の発生が見られた報告を基に,ヒトにおけるこの遺伝子の解析を行った。 対象は症候群や他の先天異常を伴わない唇顎口蓋裂患者で,また健常人を比較対照群とした。検体には血液を用い,北海道大学医学研究科医の倫理委員会の承認を得て,インフォームドコンセントに基付き研究目的の同意を得た上で採決を行った。採取した血液よりDNA抽出キットを用いてDNAを回収しLhx8遺伝子解析を行った。 今年度は患者53人,健常人37人の検体を収集し解析を行った。昨年度からの2年間で解析を行った症例数の合計は,患者103人,健常人87人であった。解析の結果,エクソン2および8の領域にそれぞれ一塩基置換が認められた。エクソン2の一塩基置換はnt160g→aでアミノ酸はグルタミン酸からリジンへと変化し,エクソン8の一塩基置換はnt912c→tでアミノ酸の変化は認められなかった。頻度は,エクソン2の一塩基置換が患者群で4人(3.8%),健常人で3人(3.4%)認められ,エクソン8の一塩基置換は患者群で33人(32.0%),健常人で25人(28.7%)認められた。これらの一塩基置換はいずれも1%以上の頻度でみられることより,single nucleotide polymorphism ; SNPと判断した。一方,これらのSNPの出現頻度は,患者群と健常人で有意差は認められず,また患者群における表現型からみた出現頻度においても有意差は認められなかった。以上の結果より,ヒトの唇顎口蓋裂の発症においてLhx8遺伝子との明らかな因果関係を同定することは出来なかった。
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