研究概要 |
筋皮神経を切断し、同側正中、もしくは尺骨神経に端側吻合し、LacZ遺伝子組み換えアデノウイスを用い、神経端側縫合後の再生軸索の再生経路の検討を行った。 10週齢Wistar雄ラット84匹の左上腕神経叢を用い以下の二つの実験を行った。 I.コントロール実験(N=27):筋皮神経、正中神経及び尺骨神経の末梢からそれぞれウイルス導入し、各神経の支配髄節レベルを検索した。II.神経端側縫合実験:第1回手術:端側縫合モデルの作成(N=57)筋皮神経の分岐部より5mm遠位で切断。近位部の断端を大胸筋内に埋没し,遠位断端をドナーとし、レシピエントの正中神経(N=30)あるいは尺骨神経(N=27)に神経外膜を約1mm開窓して端側縫合を行った。結果:[染色性]全84匹中、軸索陽性染色は55匹で,染色率は61%であった。 実験1:各神経の軸索支配髄節は、ヒトの分布と一致していた。 実験2:同側神経を用いた神経吻合ではレシピエントとドナー神経間に腕神経叢内で解剖学的に交通枝があり、ドナー神経が端側吻合部まで伸びることが可能な場合はドナー神経を支配する神経細胞より再生線維がsproutingし、しかも、そのレベルは神経細胞か、あるいはその周辺であると考えられる。交通枝のない場合には端側吻合の近辺でレシピエントの線維からcollateral sproutingが起きると考えられ、これらはこれまで知られていなかった新しいレベルでのneurotropismの存在を示唆することが解った。 最も、最近の成果としてLacZ adenovirusとCTLA4 adenovirusを同時感染させるとLacZ adenovirusの感染率が飛躍的に増加することが判明した。現在、CTLA4蛋白線染色によるトレーシング、あるいはGFP adenovirusを用いた、double tracer法の検討、およびレザー顕微鏡下に神経細胞、後根神経節におけるsproutingを検索中である。
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