p53 cDNAのcoding resionをPCR法で増幅し、pBluescriptに挿入した。シークエンスの確認後、p53 cDNAを適当な制限酵素で切り出し、平滑末端とした後にCOS配列を含んだpAxコスミドベクターに結合した。シークエンスで挿入方向の確認をした後に、EcoT221切断済みアデノウイルスDNA-TPCとともに293細胞にリポフェクション法でco-transfectし、COS-TPC法による相同組換えを行った。2週後に変性を起こした293細胞を回収し、DNAを抽出し、p53 cDNAのアデノウィルスへの挿入を確認した(Axp53の完成)。大量に培養した293細胞にAxp53を感染させ、変性293細胞を回収。凍結融解法によりアデノウィルス粒子を遊離させ、塩化セシウム密度勾配法にてウイルス液の精製、濃縮を行った。これにより10^9〜10^<10>PFU/mlの〜Axp53を得た。 日本白色家兎の耳介内側面で軟骨の露出する開放創を作製し、自然治癒させた。創は3週日頃より上皮化し、4週日頃にはケロイド類似の病変を生じ、約7週目までの間に自然消失した。4週目に採取した標本の病理組織所見では、真皮内に線維芽細胞の増殖、血管新生などの所見は見られたが、ケロイドに特徴的な膠原線維の増殖はほとんど見られず、肉芽組織に近い所見であった。 家兎の耳介内側面にケロイド類似病変を左右各2ヶ所、計4ヶ所作成し、1ヶ所は対照として、他の3ヶ所にはそれぞれ1×10^6、1×10^8・1×10^<10>PFU/mlのp53アデノウイルスベクターを局所注射した。対照部、アデノウイルスベクター注射部位は、1週目までにすべて潰瘍化し、病変の経過観察が不可能となった。家兎の耳介内側面の皮膚は極めて薄く、アデノウイルスベクターの作用で皮膚、皮下組織が壊死に陥ったと推測された。今後、濃度、投与量など再検討する必要性があると思われた。
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