今年度も引き続き、同種皮膚の無細胞化と低抗原化、同種皮膚の滅菌方法の検討、および複合型培養皮膚の開発を行った。研究の結果、以下の4点が明らかとなり、また無細胞化した同種皮膚を基質としたTissue engineered skinの臨床応用に成功した。 1 蛋白分解酵素を用いず凍結融解処理や高張食塩水処理だけで作成した同種無細胞真皮マトリックスが、最も細胞親和性が高い。 2 同種無細胞真皮マトリックスの滅菌法としては、高濃度グリセロール法が最も優れている。 3 同種無細胞真皮マトリックスを担体としたTissue engineered skinは、種々のTissue engineered skinの中で、最も正常ヒト分層皮膚に近似した組織構造を有する。 4 細胞培養は、異種細胞や牛脳下垂体抽出物を用いない、臨床的安全性の高い方法で行うことが可能である。 以上の基礎研究を踏まえて、同種無細胞真皮マトリックスを担体とした自家Tissue engineered skinを作製し、2例の重症熱傷患者に移植した。共に熱傷創切除後の脂肪組織の上に移植したものであるが、2例とも完全生着を得た。このTissue engineered skinは、同種皮膚を自己の細胞で置換して永久生着を可能としたものであり、この完全生着は世界初の結果である。 さらに現在、同種無細胞真皮マトリックスを担体とした、皮膚以外の種々の上皮組織、すなわち培養口腔粘膜や培養小腸上皮の作成法を確立しつつある。
|