研究概要 |
形成外科的手術により切除された瘢痕組織(肥厚性瘢痕,萎縮性瘢痕)やケロイド組織を用いた免疫学的検討を行った。対照として正常皮膚を用いた。染色に用いた抗体は細胞骨格関連物質に対してDako社製,抗α平滑筋アクチン抗体の他,Santa Cruz社製の抗FAK,抗vinculin,抗paxillin,抗α-actinin抗体を用い,低分子量Gタンパク質に対しては,Santa Cruz社製の抗RhoA,抗RhoB,抗K-Ras,抗pan Ras各抗体を,関連物質に対しては抗p-38,抗ERK2,抗Egr-1抗体などを用いた。さらに,三量体Gタンパク質とのクロストークについても検討するため抗RGS1,抗RGS2,抗RGS3,抗RGS5,抗RGS7,抗RGS9抗体を用いた。結果として,正常皮膚や萎縮性瘢痕の線維芽細胞では検討した抗体による細胞の陽性所見は乳頭層などに限局していたが,総じて肥厚性瘢痕の線維芽細胞においては陽性所見が得られた。特に,細胞骨格関連物質ではFAKが肥厚性瘢痕内の線維芽細胞に陽性であった。Vinculinやα-actininも弱いながら陽性であった。以前の検討では肥厚性瘢痕内線維芽細胞にはストレスファイバーが強く発現していたが,α平滑筋アクチンの発現は一部に限局していた。低分子量Gタンパク質ではRhoが肥厚性瘢痕の線維芽細胞でびまん性に発現していた。Rasも同様であった。Rasは肉芽創内の炎症細胞と思われる細胞にも強陽性であった。三量体G蛋白質の制御蛋白であるRGSsでは検討した中ではRGS7が肥厚性瘢痕では線維芽細胞にびまん性に陽性所見が得られた。ケロイドでは結節部など限局性に強陽性細胞が散見された。以上から肥厚性瘢痕の成因に細胞骨格とそれに関連する低分子量Gタンパク質やさらには三量体Gタンパク質とのクロストークの関与も示唆された
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