研究概要 |
1988年Vacantiらは、組織工学の手法を用いて、in vitroで遊離させた軟骨細胞をポリマーに播種した後に、細胞-ポリマー複合体を小動物(ヌードマウス)の体内に移植して、異所性に硝子軟骨を再生した。 この結果を参考にして、我々の実験では、軟骨細胞と生分解性ポリマーを組み合わせて大動物に自家移植を行い、耳介の3次元的構築を有する軟骨組織の分化・再生を誘導することを目標とした。 本年度の実験ではまず細胞数が複合体に与える影響、細胞採取部位が複合体に与える影響を検討した。自家繁殖犬を用いて、関節軟骨および肋軟骨を採取した。軟骨組織は、細切して、0.3% collagenaseにて酵素処理(室温、14時間)し、ナイロンフィルターで濾過して軟骨細胞浮遊液を作成した。単離した軟骨細胞は、F12に10% FBS, ascorbic acidを添加した培地で継代培養して増殖させた。本手技が確立できたため、増殖させた軟骨細胞をヒト耳介形態を有する3Dポリマー(PGA/PLLA)に播種して、細胞・ポリマー複合体を作成し、これを犬およびヌードマウスの皮下に移植した。 その結果、移植10週目における細胞数および採取部位が複合体の形態に与える影響は少なく、継代培養条件が最終的な複合体の形態に関与している事が示唆された。今後さらに、長期間移植された組織を採取して、軟骨組織再生および3次元形態について詳細な解析を予定している。
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