研究概要 |
形成外科が扱う顔面や手の外傷・組織欠損に対する再建術の一つとして,整容的・機能的な再建を行う目的で,遊離組織移植がもちいられる。しかし,従来の皮弁では,ドナーの犠牲が大きく,種々の合併症が報告されてきている。また,広範囲の欠損や顔面頸部・手の機能障害に関しては現時点では再建不可能であり,血行障害を伴った手指の広範な組織欠損において患肢温存は不可能とされている。そこで近年,穿通枝皮弁の導入により,より犠牲の少ない皮弁のドナーが報告されてきており,ことに海外では,従来筋皮弁として用いられてきたドナーが,乳房再建をはじめとして,穿通枝皮弁にとってかわられる動きがでてきている。 本研究では,(1)皮膚扁平上皮癌,特に進行例に関して統計的観察を行い,遊離組織移植,特に穿通枝皮弁の適応につき検討を加えた。(2)難治性の潰瘍や組織欠損に対しての臨床応用,すなわち股関節腔にまで及んだ大転子部褥瘡や,腹壁欠損に対する前外側大腿皮弁を用いた再建の治療経験について報告した。(3)手指への応用として,熱傷後の爪欠損に対する血管柄付爪移植の応用例を報告した。 今回の研究で報告した穿通枝皮弁を用いた再建は,従来の筋皮弁を用いた再建と比較して,皮弁の挙上に対してある程度の熟練を要するものの(1)皮弁の採取部の機能的犠牲が少ない。(2)筋体を含まないために,薄い皮弁として利用可能である。(3)剥離した筋体内の血管を茎として利用できるために長い血管茎を得ることができる。などの利点を有しており,今後さら応用範囲が拡がるものと考えられる。
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