研究目的 動物由来シアリダーゼの生物学的な役割を解明する一環として細胞膜シアリダーゼのヒト由来cDNAをマウスに発現させ、その影響を切歯歯胚の分化過程において組織学的に検討した(平成14年度)。しかし、その影響を特定するに到らなかった。その原因が組織標本の不十分な化学固定にあると考え、原因の解消と本研究課題の再検討を目的とした。 研究結果 組織の化学固定を良好にするため、環流固定を用いた。環流固定では、固定剤が心臓から血管経由で体の隅々へ短時間に達し、組織学的な構造の保存が大きく改善された。しかし、環流固定は、マウスの体が小さいため技術的に難しく、成功率も低かった。手術の簡略化と成功率の向上を目指し、方法や器具を工夫した。その結果、成功率が、生後4週令以上のマウスで100%と、飛躍的に向上した。固定剤を心臓へ注ぐ方法の概略を以下に示す。カテーテル(持続硬膜外麻酔用、外径0.9mm)を長さ約10cmに切り、その一端の管内に26ゲージの注射針の針管を押し込んで接続する。カテーテルの他端へはコネクターとルアーテーパー式フィッティングを介してシリコンチューブの一端を接続する。シリコンチューブをペリスタポンプに装着し、チューブの他端を固定剤に沈める。固定剤は、ポンプの力でチューブ内に吸い込まれ、カテーテル経由で注射針の先端から出てくる。麻酔下で心臓を露出し、左心室へ注射針を突き刺す。アロンアルファで針を心臓表面に付着させ保持する。 考察、結論 マウスにおける環流固定が簡便かつ確実になり、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスを対象とした組織学的な研究が進展する。その点で今年度の成果は意義深い。
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