細胞膜シアリダーゼは、動物由来のシアリダーゼの一種で、細胞を生化学的に分画すると細胞膜画分に酵素活性が認められることから、このように命名された。本研究課題では、本酵素の局在を形態学的に検証するとともに、生物学的な意義を追究した。酵素の局在が細胞膜にあることについては、本酵素のウシcDNAを強制発現させたCOS細胞と、ヒトcDNAを発現させたトランスジェニックマウスの骨格筋細胞を用い、免疫細胞化学的手法により確認できた。生物学的な意義については、トランスジェニックマウス(前述)の切歯歯胚が野生型マウスのそれと比べどのような影響を受けるかを組織学的に検討した。組織学的に良好な構造を保持するために環流固定を施し、麻酔下で動物の左心室から血管系へ固定液(4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液)を注いた。しかし、構造の保持が不良で、遺伝子が強制発現された影響を特定できなかった。組織標本の固定が不十分であることが原因と考え、環流固定の方法を改良した。改良の肝要は、開胸して固定液を左心室へ注ぐ手術を簡便にし、手術時間を短縮することにあった。それは、持続硬膜外麻酔用カテーテル(トップ社製)として使われるポリエチレン製の細管に金属製の注射針(26ゲージ)を装着して達成された。固定液を心室内へ導くため、細管の一端にある注射針を左心室の筋層へ突き刺して心室内へ挿入し、細管の他端から固定液をペリスタポンプで注いだ。刺し込んだ針が心臓から抜けないよう、適量の外科用アロンアルファを針の刺し込み口付近へ塗布した。改良によって野生型マウスで良好な組織標本が得られたが、研究期間内にトランスジェニックマウスに適用し組織学的な検討をすることはできなかった。
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