研究概要 |
軟骨細胞の分化増殖の重要な因子として線維芽細胞増殖因子受容体III型(FGFR3)があげられる。骨格成長において軟骨は骨組織からの血管侵入を受けるが、それは肥大化細胞層から血管内皮増殖因子(VEGF)が産生され、VEGF受容体(flt-1, KDR/flk-1)を有する血管内皮細胞に作用することで血管新生が誘導され軟骨へと侵入する機構を申請者は提唱している。一方、FGFR3遺伝子欠損マウスでは、肥大化細胞層のVEGF発現が抑制されていることから(Amizuka et al., JBMR16:S187, 2001)、軟骨細胞ではFGFR3がVEGF発現を誘導する仮説を立てた(研究計画1)。それを検討するために、wild-typeおよびconstitutive activeを誘導するFGFR3^<K650E> cDNAをtransfectionされた培養軟骨細胞では、VEGFの発現が著しく上昇する結果を得た。また、mutant FGFR3^<K650E>によって発症する致死型軟骨無形成症を解析すると、軟骨・骨境界部における血管侵入が著しく亢進していたことから、in vitroで得られた結果とほぼ一致すると考えられた。その機序を明らかにする目的で、FGFR3 signal transductionの下流に位置するsignal transducers and activators of transcription-1, 3(Stat-1, 3)を検討すると、wild-typeおよびmutant FGFR3 cDNAをtransfectionされた軟骨細胞では、stat-1,-3の核内移行が認められた。特に、stat-3はVEGF発現を促進することが知られており、FGFR3のVEGF発現促進機構はstat-3を介する可能性が示唆された。
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