先天性骨格異常である軟骨無形成症と軟骨異形成症は、線維芽細胞増殖因子受容体III型(FGFR3)あるいは副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の恒常的なシグナル伝達で発症することが明らかにされている。そこで、軟骨細胞の増殖分化に対するFGFR3とPTHrPの作用を解析した。一方で、PTHrPには核小体移行シグナルが存在し、受容体を介さず細胞の核に移行する可能性も考えられる。以上、軟骨内骨化に関与する因子であるPTHrP、FGFR3を中心に組織学的な解析を行った。 (1)胎生18日齢におけるFGFR3^<-/->/PTHrP^<-/->マウスは四肢の発達が悪く、PTHrP^<-/->マウスの骨格異常に類似した像を示した。特に、骨端軟骨の低形成、ならびに軟骨細胞の増殖抑制を示したことから、軟骨細胞の増殖に対してPTHrPはFGFR3よりも優位に機能するか、機能的に下流に位置することが考えられた。しかしながら、PTHrP^<-/->マウスで観察された軟骨細胞のアポトーシスは、FGFR3^<-/->/PTHrP^<-/->マウスでは僅かにしか認められず、また、VEGFの発現もPTHrP^<-/->マウスでは肥大化軟骨細胞に一致してその発現が認められたのに対して、FGFR3^<-/->マウスおよびFGFR3^<-/->/PTHrP^<-/->マウスではVEGFの発現が低下していた。このことから、FGFR3は軟骨細胞の増殖に対してはPTHrPの上流で機能するが、肥大化期以降の軟骨細胞に対してはFGFR3独自の作用を有することが示唆された。 (2)PTHrPの多くはPTHと共通の受容体を介して作用すると考えられるが、一方でPTHrPは核小体移行シグナルを有している。PTHrPの核小体移行のメカニズムは開始メチオニンをコードするAUGと下流に存在するロイシンをコードするCUGからの翻訳によるものであることが明らかにされた。
|