本年度はオステオプロテジェリン(OPG)の生体内での局在、機能を明らかにするためにラットOPGのアミノ酸配列233-247に対するペプチド抗体を作製し、生化学的、免疫組織細胞化学的に検索した。ウエスタンブロッテイングによりラット切歯エナメル器抽出液からは還元状態で55kDと90kDの二本のバンドが、脛骨、頭蓋骨の抽出液からは90kDの一本のバンドが認められた。55kDは従来報告されているOPGの分子量に相当するものの、骨組織で認められた90kDは予想される分子量より大きく、糖鎖修飾の差異、アイソフォーム、ファミリーの存在が推測された。免疫組織化学的検索により、OPG局在は骨梁の骨表面に線状に認められ、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ染色との2重染色から破骨細胞直下の骨基質および吸収直後の骨表面にOPGが局在することが明らかになった。また、免疫電顕的にも破骨細胞の明帯下にOPG局在を示す多数の金粒子が確認された。骨基質内においては、軟骨基質と骨基質の境界部、骨基質と骨基質の境界線であるセメントラインに陽性反応が認められた。OPG産生細胞については不明であるが、骨芽細胞、骨細胞の一部も陽性反応を示し、肝臓、腎臓などでもその発現が見られることから、骨組織由来のもの、あるいは血清由来のOPGが骨吸収直後に骨表面に保持される可能性が示唆された。セメントラインにはαHSグリコプロテイン、オステオポンチン、骨シアロプロテインの局在も報告されており、OPGがこれらのタンパクと結合することにより特異的にセメントラインに局在するのか、あるいは単なる再石灰化の過程で吸着されるのかについては今後の研究が必要である。以上のことから、骨組織内に存在するOPGは1) 新たに分化する破骨細胞形成を抑制する、2) 破骨細胞の活性を抑制するという2つの作用により、破骨細胞による骨基質の過度の吸収を抑制しているものと考えられた。
|