研究概要 |
口腔連鎖球菌Streptococcus sobrinus 6715株の不溶性グルカン合成酵素(GTF-I)のデキストラン結合ドメイン(DXB)は6つの繰り返し配列から構成される。昨年度は,デキストラン結合ドメイン全長(6R)をコードするプラスミドに一塩基置換によってストップコドンを導入し,C末側から繰り返し配列を段階的に欠損したペプチドである1R,2R,3R,3.5R,4R,5Rを各々コードするプラスミドを作製した。これらのプラスミドで大腸菌を形質転換し,2R〜6Rまでの発現確認,精製を行った。本年度は3.5R,4R,5R,6Rの4つのDXBタンパク質とデキストランとの結合について,等温滴定熱測定を行い,結合定数等を推定した。DXBタンパク質はn個のグルコース残基からなるデキストラン鎖上のグルカンユニットと結合すると仮定した。25℃での測定では,結合定数Kは3.5Rから順に3.0±0.3×10^5,2.5±0.3×10^6,3.0±0.3×10^6,5.3×10^7[M^<-1>]となり,結合にともなうエンタルピー変化ΔHは,それぞれ-134±4,-160±2,-188±4,-253[kJ/mol]となった。また,結合に必要なグルコース残基数nは,それぞれ17.9±0.5,24.5±0.3,28.6±0.4,36.5となり,繰り返し単位あたり6個程度であることが推定された。次のステップとして,GTF-Iの触媒ドメイン(GS)のC末に2R,3R,3.5R,4R,5R等のDXBペプチドが付加したタンパク質の発現系を構築する。それらのタンパク質を精製し,各々の酵素活性を測定し,DXBの酵素活性に与える影響を検討する予定である。
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