研究概要 |
昨年度に引き続き、正常唾液腺ならびに唾液腺腫瘍(多形性腺腫、腺様嚢胞癌など)組織、あるいはそれからの培養細胞を用いて実験を行い、以下の成果を得た。 1.腺様嚢胞癌の組織を用いて検討した結果、腫瘍細胞が胞巣内外に産生し、特徴的な組織構築に強く関わっている豊富な粘液様基質内には、グリコサミノグリカンに加えて、matrix metaloproteinase (MMP)-9が豊富に含まれていることが明らかとなった。このことは、腺様嚢胞癌が正常で存在する間質を分解し、浸潤する性格と密に関係していると見なされた。現在、培養細胞株を用いて、検討を行っている。一方、多形性腺腫の細胞外基質内のMMPはごく少量で、両腫瘍型が産生する細胞外基質には、大きな違いがあることが明らかとなった。 2.多形性腺腫の上皮細胞にhTERTを導入し、現在まで継続して増殖を続けている細胞を用い、細胞接着分子の発現と基質形成との関連について検討を行ったが、confluentなり、細胞同士が密に接しても細胞接着分子(CD44v9,E-cadherin,β-catenin)の発現は弱く、不均一であった。また、RT-PCR、western blottingでこれらの細胞によるaggrecanやtype II collagenの産生について検討したが、今のところ、産生を示す所見は得られていない。軟骨への分化に関連する遺伝子を導入することを検討中である。 3.扁平上皮癌の手術に際して切除された正常顎下腺より得られた培養細胞についても、細胞接着分子の発現について検討し、これらは細胞膜にCD44v9,E-cadherin,β-cateninを明瞭に発現し、さらに、培養を続けることにより一部の細胞は腺管を形成することを確認した。基質産生についても検討を行いつつある。
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