研究概要 |
我々は,これまでの研究で,若年性歯周炎の原因菌であるActinobacillus actinomycetemcomitans が,これまで報告されている外毒素とは異なる新規毒素を産生していることを見出し,その生物学的活性を報告してきた.それを踏まえて,今回の研究プロジェクトでは,我々が新たに見出した毒素の精製を開始した.精製に先立ち,A. actinomycetemcomitans Y4株の培養上清を採取して,HPLC(Waters社)を用いて精製を進めた.最終精製タンパクをSDS-PAGEで泳動し,銀染色を行って均一性を確認したところ,複数のバンドが検出された.現在,そのうちのどれが,活性タンパクであるかを確認しているところである.次年度は,まず,その結果をいち早く得られるように実験を行ない,銀染色を行って均一性を確認した後,アミノ酸配列をマイクロシークエンサーで明らかにする予定である.さらに,既知のタンパクのアミノ酸配列と比較検討して,新規タンパク毒素であることが判明した段階で,そのタンパクを担っている遺伝子のクローニングを行なう.一方,我々は,A. actinomycetemcomitansが,細胞を膨化させる毒素cytolethal distending toxin (CDT)を産生して,G2/M期で著しい細胞周期の停止を引き起こすことを確認している.加えて,我々が見出した新規毒素は,G2/M期での細胞周期の停止のみならず,アポトーシスをも誘導することが見出している.そこで,両者の作用機序の違いを,細胞内情報伝達といった観点から解析したところ,CDTと新規毒素は,ともに,G2/M期での細胞周期の停止の過程で,cyclin-dependent kinase inhibitor p21が重要な役割を果たしていることが明らかとなった.次年度は,アポトーシスの誘導がどのような機序で引き起こされているのかを詳細に検討する予定である.
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