(1)メッケル軟骨の中間部組織は蝶下顎靭帯として残存することが知られている.この靭帯形成のメカニズム解明のために、メッケル軟骨の増殖、分化、石灰化に及ぼす上皮増殖因子(EGF)の効果について検討した.その結果、EGFは軟骨細胞の分化を抑制し、線維芽細胞への形質転換を促進することが判明した.この結果はメッケル軟骨の中間部組織は未石灰化のままに残存し、線維芽細胞へと形質転換して靭帯を形成する可能性を示唆している. (2)メッケル軟骨の消失のメカニズムを解明するために熱処理による細胞死誘導の実験を行った.40〜45℃の準致死的温度では細胞の形態的変化もなく、むしろDNA合成は促進され、アポトーシス細胞が高頻度に出現した.50〜60℃の致死的温度では細胞の形態は崩れ、高頻度に細胞死が出現するが、この細胞死はネクローシスであった.準致死的温度で出現するアポトーシスはheat-shock protein 70の出現と相関し、誘導されたアポトーシスにheat-shock proteinの関与が示唆される. (3)メッケル軟骨細胞の脂肪細胞へめ形質転換について:実験の過程の中でメッケル軟骨をニワトリ血清で培養すると軟骨細胞が脂肪細胞に形質転換することが判明してきた.現在、このメカニズム解明に向けて研究を続行中である.
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