研究概要 |
メッケル軟骨細胞を培養当初から10%ニワトリ血清(CKS)添加α-MEMで培養すると、本来の軟骨細胞の性質が失われ、細胞内に多量の脂肪滴を含有した細胞に移行する。このような細胞は脂肪染色では典型的な脂肪細胞の性質を保持していた。CKSは軟骨細胞の増殖を抑制し、脂肪細胞への分化を促進した。このような脂肪細胞への形質転換のメカニズムにつて論文として発表した(Cell & Tissue Res, Ishizeki et al., 2002)。 さらに脂肪細胞の転化がメッケル軟骨細胞のみならず、他の間葉細胞でも生じるものか否かを、歯髄細胞、皮下線維芽細胞と骨芽細胞様3T3-E1細胞を用いて検討した。CKS存在下では、これらの細胞はズダン陽性の脂肪滴を形成し、脂肪の分化マーカーとされるPPAR、GPDHやレプチンによる免疫染色に陽性で、脂肪細胞としての十分な性質を保持していた。CKS処理した何れの細胞もBrdUの取り込みが抑制され、細胞増殖は緩慢に推移した。CKS因子は線維芽細胞、歯髄細胞をはじめ、すでに分化の方向が決定された3T3-E1細胞でも同様に脂肪形成を促進することから、間葉細胞に共通する作用因子であることが示唆された(岩医大歯誌、高橋徳明、2002)。 このような脂肪誘導能は培養条件下だけの現象なのかを検討するため、CKSの乾燥plasma clotを作成し、これをマウスの脾臓に移植して脂肪細胞の分化をin vivoで観察した。その結果、移植されたplasma clotは脾臓の未分化間葉細胞に多量の脂肪滴を形成することを電顕や免疫染色によって確認し、現在論文を作成中である。
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