1.歯髄接合上皮-エナメル質界面にしばしば出現する歯小皮についてその性状と由来を明らかにする目的で、サルの歯髄を材料に高分解能電子顕微鏡的に検討した。その結果、歯小皮は基底膜構成成分がエナメル質と歯髄接合上皮内側基底板の間に沈着し、重合して出来るものと推測された。これと同時に、基底板の微細な網状間隙に、おそらく歯肉溝浸出液に由来すると考えられる物質、あるいは赤血球の破壊産物に由来すると思われる物質が沈着することにより、歯小皮に特有な電子密度の高い無構造を与えているものと思われる。 2.歯の基底膜の機能を理解するために、比較組織学的検索を行った。材料はサメの各発育期の歯牙で、これを高分解能電子顕微鏡で観察した。その結果、基底膜は歯牙の発生と発育、成熟と物質の移動、あるいは萌出後の歯髄粘膜との接着など、その機能に応じた構造特性を現すことが示された。 3.歯髄接合上皮とエナメル質との接着機構を明らかにする目的で、サルの歯牙を材料に高分解能電子顕微鏡的に検討した。その結果、接合上皮はヘミデスモゾームを介して内側基底板に接着していた。一方、エナメル質側には、新たに添加されたと思われる厚さ約200nmの基底板(supplementary lamina densa)が出現していた。これを非脱灰切片で観察すると、このsupplementary laminadensaには微細な結晶が沈着しエナメル質の結晶に連続していた。すなわち、サルの歯髄接合上皮の内側基底板は、そのエナメル質側の一部が石灰化して最表層エナメル質を構成することにより、歯肉接合上皮-エナメル質の強い接着を仲介していることが示唆された。
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